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ここは退屈迎えに来て


ここは退屈迎えに来てここは退屈迎えに来て
(2012/08/24)
山内 マリコ

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地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。
フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、
「R-18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。

<くすくすと笑いが止まらないのに、いつのまにか切ないこの気持ちは何?>

全然パッとしない自分も、行き当たりばったりに無意味に過ぎていく人生も、
東京の喧騒にごたまぜになれば、全部それなりに格好がついて見えた。
ヒールで街を闊歩するようなキラキラした気分、広く浅くの友人知人との、楽しいようなそうでもないようなわいわいした時間。
でもそんなのは、もうぜんぶ嘘か幻みたい。
いまはこの、ぼんやりトボけた地方のユルさの、なんとも言えない侘しさや切実な寂しさだけが、すごくすごく、本当に思えた。
――「私たちがすごかった栄光の話」より

24時間営業のファミレスは、あたしたちと似たような境遇の暇な若者でいっぱいだ。ナイロンジャージにスウェットパンツの、引くほど行儀が悪いヤンキーカップル。
ときめきを探している女の子、携帯をいじってばかりの男の子、テンションの低い倦怠期カップル。そんなくすぶった人々。若さがフツフツと発酵している音が聞こえる。
フロアの通路を歩くときは毎回、品定めするような尖った視線を浴びる。知ってる奴じゃないかチェックしてるのだ。みんな誰かに会いたくて、何かが起こるのを期待してるんだと思う。あたしだってそう。
――「君がどこにも行けないのは、車持ってないから」より

都会に出てから本当に生きられる気がしている。人生がはじまると思っている。
都会に出て、誰の力も借りずに、自由にのびのび生きたい。
ちょうどまなみ先生が、あの深緑色のオプティのハンドルを握って、好きな音楽をかけ、ギュゥンとアクセルを踏み込むように――あんなふうに自分の船を自分で漕ぎたい。
――「東京、二十歳。」より


日常は夢見たこととは違って、平坦で、地味だ。
それを象徴するのが、このぜんぶの短編にでてくる「椎名くん」
高校時代に超イケてた男の子。
何でも出来て、かっこよくて、誰からも一目置かれる人。
椎名くんは卒業すると、地味に働き、大恋愛じゃない末に結婚をし、ありふれた日常を生きている。
そんな椎名くんを見て、周囲は「あれ?」と思う。
きっと年をとっても椎名くんはかっこよくて、華やかな存在だと信じていたからだ。

意外と椎名くんは、過去の栄光は自慢に思っているかもしれないけど、それに未練は見られない。
「時間の流れだから仕方ない」という感じがする。
そういう努力なさが、器用貧乏というか、「そんだけ素材良かったらもっと努力しろよ」ともったいない人だなぁと思う。

読み終えた後は、あっさりしている小説だなぁと思ったんだけど、何日かすると思いだしてはページをめくる。
椎名くんってどんな人だっけ?と思って。
爽快さはない。今を受け入れて、悪くない毎日を生きていく人たちの話。
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